カテゴリー別アーカイブ: 読書

標木

7月某日、奈良に行ったついでに県立図書館でしばし読書。
いぜんから読んでみたかった、標木(田郷虎雄*1943)はすぐみつかる。まあ、ネットで書架の場所まで調べてから行ったのですが。

書店のウェブサイトによれば、「厚生船を舞台とした小説。満鉄は物資や娯楽などのサービス提供するために厚生列車(移動巡回慰安列車)を運営していたが、厚生船はその河船版で..、」との説明でしたので、豪華客船みたいなのを想像していたのですがそうではなくて、満鉄の厚生船はアムール川(黒江)沿岸の僻村に寄港して演芸会や映画を催したり日用品を販売したり愛路活動(*1)するのが目的だったようです。
豪華客船を想像していただけに、満洲のギャンブルについて触れてないかなーと思ってたのですがそういう話は皆無でしごく健全な内容でした。
まあ、いかがわしい話としては、金山鎮とかいう町の私娼(たぶん私娼)についてチラッと書いてはありましたが。

小説とはいうものの、あとがきによると、田郷虎雄氏は1939年と1941年に満州を訪れていて、標木は1941年に満鉄の招きで訪れた際に見聞きした話をもとに書いたもののようです。

来年(2020年)は田郷虎雄氏の没後70年。こういう入手しにくい小説も青空文庫あたりで読めるようになるといいのですが。

3時間ほどで読書を終えて佐保川を伝って大和西大寺に向かったのですがこれまた暑い。 駅前の定食屋でビール飲んでから奈良競輪場へ寄る。
予選の脚みせで4番の選手に申し訳程度の声援をおくる。あとで結果を見たら3着だった。ありがとう。

(*1)船には愛路班というのがいて、寄港地の子供にキャラメルや満鉄のマークが入った鉛筆を配るという描写がある。子供にたすきをかけさせて何か唱和させるという作業も愛路の担当らしい。

競輪円舞曲(色川武大)

昭和50年発表ですから、比較的新しいものです。レースの描写からするとすでに地区別のライン戦が主流のようです。高原永伍さんらの3強時代が終わってだいぶたったころのものです。 福武書店 色川武大阿佐田哲也全集11に収録されています。

 

光を覆うものなし(坂口安吾)

昭和26年新潮に掲載。仕切っている人も判定基準もあいまいな時代だったようですからもめごとも多かったようです。この文章とは直接関係ありませんが、鳴尾事件が昭和25年ですから法律はできたけど運営方法はエイヤッという感じだったのかもしれません。 ちくま文庫坂口安吾全集16に収録されています。

 

今日われ競輪す(坂口安吾)

いろいろ書いてありますが、坂口安吾もけっこう好きのようです。 強い選手を数人の選手で包んで踏ませないようにする作戦もこのごろにはすでにあったようです。  昭和25年(1950)文藝春秋に発表されたものですが、ちくま文庫坂口安吾全集8に収録されています。自転車競技法の公布が昭和23年ですから、競輪がはじまってすぐというころの作品です。青空文庫でもテキストファイルが入手できるようです。  松本勝明さん(京都)の選手登録が昭和24年らしいので、もしかすると安吾先生もレースでみたことがあったかもしれません。

 

競輪必勝法(能島廉)

昭和38年ごろの作品。主人公の私は東京で出版社に勤めていて、いとこが競輪選手という設定です。勝負師は常に孤独なのです。 絶版になっているようですが、学芸書林 現代文学の発見別巻 孤独との戦い という小説集に収録されています。 新装版も出ているようです。 奈良市立図書館にはありましたが、普段は書庫にしまってあるようです。  高原永伍さん(神奈川)らが活躍していたのもこのころのようで、強い選手の番手を取り合うという描写もあります。ただし防具などは皮ヘルメットレベルだったのでレース中の事故も結構多かったようです。

 

競輪(富士正晴)

昭和31年ごろの作品。「宝くじ・競輪・競馬・パチンコのたぐいは有ったほうが良いと思いますか、無くした方が良いと思いますか」  観光の3大要素といえば、名所と旧跡、ギャンブル、セックスあたりで、オーストラリアなどはこれを実践しているわけですが問題は誰が客かというところ。 何十年か前、エリザベス女王が来日したとき、「競馬は好きだけどギャンブルは嫌い」というお言葉があったのですが、スポーツ観戦の要素とギャンブルの要素 を切り離さないと、有ったほうが良いという人はなかなか増えないのではないかと個人的には思いますが。ブックメーカーを合法化して、競技団体に販売権料を 払って車券や馬券や野球券を売るというシステムにするというのもひとつの手かもしれません。要は外国からの観光客がいっぱいお金をおいていってくれるよう なものができればベスト。  富士正晴の「競輪」では、宝くじや公営競技が貧乏人から金を吸い上げるシステムと化しているのを憂えてか、変な法律作るんじゃねえといったニュアンスを 含んでいるようにも読めました。 岩波書店富士正晴作品集2に収録されています。